青函トンネル開通の翌1989年、北斗星をさらに上回る豪華寝台特急がデビューしました。「トワイライトエクスプレス」と名付けられた新しい列車は、深緑色の車体に一筋の黄色い帯を巻き、「ブルートレイン」とは一線を画したいでたちで、大阪から札幌までを22時間かけて走りました。
しかし車両の老朽化により、2015年3月をもって廃止となることが発表され、25年の歴史に幕を下ろすことになりました。僕は2009年と2010年に2回乗車、ともに札幌へ向かう下り列車でしたが、この2回きりで終わりになってしまいます。乗車時に撮影した写真とともに、トワイライトエクスプレスの夢の旅を振り返ってみたいと思います。
トワイライトエクスプレスの特急券。列車名が長いために、「トワイライトEXP」と省略されています。このチケットはA寝台個室「ロイヤル」のもので、1人または2人で利用できます。
大阪駅を12:03に発車し、終点札幌駅に着くのは翌日の9:52。およそ22時間の、贅沢な陸路の旅の始まりです。
出発は大阪駅10番線。北陸方面の行き先が並ぶ中、遥か遠く離れた「札幌」の文字が出発案内に表示されます。やはり、列車名が長いため2行表示になっています。
11:45頃、大阪駅10番線にトワイライトエクスプレスが入線します。食堂車のクルーが、お辞儀をして列車を迎えています。
側面の行先表示幕。列車名と行先は日本語と英語表記が入りますが、やはり長い…。
車体側面にあるトワイライトエクスプレスのエンブレム。WEST JAPANとあるように、この列車はJR西日本が管理しています。天使が向かい合うこのエンブレムは各車両に貼られ、車内でもたくさん見かけます。品のあるデザインですね。
いよいよ列車に乗り込みます。出入口の下にはカーペットが敷かれ、よく見ると先ほどのエンブレムが描かれています。
車内の通路です。シックな木目調になっていて、ホテルの通路と遜色ない感じです。向かって右側に客室の扉が並んでいます。狭いですが窓があるので閉塞感は少ないです。
このとき利用したのは2号車5番のA寝台個室。入口の扉には「A-5」と書かれたプレートが貼られています。ここにもエンブレムがありますね。
A寝台個室「ロイヤル」の車内です。北斗星にもロイヤルはありますが、こちらが1年後に作られてるので、少し設備に違いがあります。ソファーベッドと小さな椅子があり、2人で利用することもできるようになっています。
大阪駅を発車すると、間もなくいい日旅立ちのメロディーが流れます。「皆様の夢を乗せまして、トワイライトエクスプレス、大阪駅を発車いたしました。」のアナウンスに感動します。乗客1人1人の夢を運ぶ列車なのですね。YouTubeよりutsunomiyayukiさんの動画で音声をお聞きください。
出発後、車掌さんによる検札と部屋の案内があり、カードキーが渡されます。そして食堂車のクルーが、ウェルカムドリンクとしてお茶とコーヒーを届けに来ました。
室内に置いてある列車案内はまるでホテルにありそうな豪華なものでした。隣のは食堂車クルーが作成したという「旅のしおり」。
京都を過ぎると、しばらくして進行方向右側に琵琶湖が見えてきます。ロイヤルの客室窓は進行方向左側にしかないので、通路に出て眺めました。
このトワイライトエクスプレスは大阪発札幌行きだけ、食堂車がランチタイムも営業しています。最後に残ったランチが食べられる列車となりました。このときはオムライスを注文。食後にコーヒーもいただきました。トワイライトエクスプレスでは食堂車の名称を「ダイナープレヤデス」と付けています。
食後のひとときを、車窓を眺めながら客室で過ごします。正面にあるのがソファーベッド。客室内も壁は木目調、天井は間接照明のために白となっています。ロイヤル個室のソファーの色は青で、クラシカルな雰囲気。
トンネルに入るとご覧のとおり。室内の照明はすべて電球色で統一されていて、落ち着きのある空間を演出しています。
富山を過ぎると、車窓に日本海が見えてきます。利用する時期によって異なりますが、9月頃だとこのあたりあたりで陽が沈み始めます。これがトワイライトエクスプレス車窓の最大の見どころ、日本海に沈む夕陽を眺めるトワイライトタイムなのです。
ブルーモーメントの景色を車窓に、ロイヤルの個室で過ごすひととき。新幹線や飛行機では味わえない、贅沢な時間を感じます。
トワイライトエクスプレスのディナーは、12,000円という豪華なもの。とても僕には手が届きません。そんな人への救済措置として、お弁当も用意されています。2009年の乗車時は、食堂車で作ったお弁当をご覧のように丁寧に包んで販売していました。
内容は幕の内風なもので、お茶も付いて1,500円くらいだったと思います。翌2010年乗車のときは、食堂車で作るのをやめてしまい、ただのお弁当となり、お茶も無くなってしまいました。
トワイライトエクスプレスの全A寝台個室の室内には、シャワールームと洗面台・トイレが備わっています。シャワーはタイマー付きで、20分間使用できます。構造は北斗星のロイヤルとほとんど同じです。
シャワールームのシャワーユニット横に、洗面台とトイレユニットがあります。上段が洗面台、下段がトイレになっていて、これはトイレを展開した状態。
食堂車ではコース料理を提供するディナータイム終了後、23時頃までパブタイムとなります。ここでミックスナッツと赤ワインを注文、流れる夜景を見ながら至福の一時です。
食堂車「ダイナープレヤデス」は片側1人と2人がけのテーブルが並び、黄色いテーブルクロスに電球色のランプチェードが灯るという内装。とても列車の中とは思えないですね。
食堂車のとなり、4号車にはロビーと共用シャワー室があり、「サロンデュノール」という名前が付いています。ロビーのイスは全席が日本海側を向いていて、天井まで伸びる大窓から日本海に沈む夕陽を眺めることができます。
さて、そろそろお休みタイムです。ロイヤルのソファはスイッチ1つで背もたれが倒れてベッドにかわる電動ソファベッド。ご覧のとおり部屋のほとんどがベッドになるほどの大きさ。幅は140cmもあり、セミダブルサイズです。
翌朝、目が覚めると車窓には昭和新山。北海道内では車窓は山側を向いています。
A寝台個室利用者には食堂車からモーニングコーヒーまたは紅茶がサービスされます。このときだけ、エンブレムの付いていないカップが使用されました。北海道の景色を眺めながらのコーヒータイムです。
朝食の時間は予約制です。朝に弱いので一番遅い時間で予約し、洋定食を頼みました。スクランブルエックがふわふわでとても美味しかったのを写真を見ただけで思い出します。
朝食にはモーニングコーヒーが付きます。。。って、乗車してから何杯コーヒーを飲んだでしょう?この専用デザインのコーヒーカップは販売していて、記念に買いました。持ち帰りではなく、後日配送で送られてきます。
大阪駅を出発してから22時間あまり。再び「いい日旅立ち」のメロディとともに、札幌到着のアナウンスが流れ、夢を運んできたトワイライトエクスプレスの旅も終了です。札幌駅のホームでは記念写真を撮るのが恒例。この写真は1号車の「展望スイート」。乗ることはできずに終わってしまいます。
役目を終えて車両基地に引き上げて行きます。しかし整備の後、4時間あまりすると再び折り返し大阪に向かう列車となるのです。
トワイライトエクスプレスは夢を乗せて運ぶ列車。単なる大阪から札幌に人を運ぶ移動手段ではなく、クルーズトレインのような観光列車でもありません。「日本のオリエント急行」とまで称され、指定券の予約がとりにくい人気列車であり続けたのは、やはり『おもてなし』を大切にしていたからだと思います。車両を新造して残してほしい列車でした。
乗車したときの思い出をもとに、Holy Night Expressというクリスマス作品も生まれました。この列車や運行に携わったすべての人に、お礼を申し上げたいと思います。
CamelliaのFacebookページにも、トワイライトエクスプレス乗車時のアルバムを作成していますので、合わせてご覧ください。
2009.09.25 2010.09.22 撮影
2015.02.15 UP