1988年3月13日青函トンネルが開通し、北海道と本州が1本の線路で繋がりました。それと同時に上野から青森まで走っていた寝台特急のうち3本を新たに「北斗星」と名付けて札幌まで延長し、東京と札幌の都心部が乗り換えなしで結ばれることになりました。
1人用A寝台個室「ロイヤル」の登場やコース料理の提供など、それまでのブルートレインには無い豪華さが付加価値となり、長く人気列車として走りつづけましたが、2015年3月13日、惜しまれつつ定期運転が終了となりました。
僕は高校の頃に大学受験で乗ったのが最初で、最近も北海道に行った帰りに利用していたのですが、単なる移動手段を越えた楽しみがあっただけに、残念でなりません。最近の乗車時の写真とともに、ここに記録を残しておこうと思います。
2014年1月に上り北斗星に乗車したときの様子を中心にご紹介します。札幌を17:12に発車、上野には冬季ダイヤのため10:05に着きます。17時間近い旅路ですね。
札幌駅4番線で北斗星の入線を待ちます。下りの到着は3番線、上りの出発は4番線を使用することが多いです。行先表示には数少ない北海道外の地名が見られます。
17:03頃、札幌駅4番線に北斗星が入線してきました。札幌駅は屋根が低く暗めなので、流し撮りを試みるも失敗・・・
側面の行先表示幕。札幌駅で道外の行先が見られるのは特急北斗星の「上野」と急行はまなすの「青森」だけです。大阪行きは既に廃止されてしまいました。
北斗星はJR北海道とJR東日本が所有する車両の混結になっています。JR北海道が所有する車両には、こちらの北斗星エンブレムが付いています。シールではなく金属製のようですが、だいぶ年期が入っていますね。
4番線に下がる乗車口案内。北斗星とカシオペアは同じホームから出発します。乗車位置も同じですね。
この時は10号車のA寝台1人用個室「ロイヤル」に乗車しました。10号車は2人用B寝台個室「デュエット」との合造車で、JR東日本が所有する車両です。
A寝台個室「ロイヤル」のドアにはこのようなプレートが付いていました。トワイライトエクスプレスに比べると控えめですね。
A寝台個室「ロイヤル」の室内です。木目の壁とブラウンのシートで落ち着いた雰囲気。他の車両に比べて窓が大きいです。椅子と小ぶりなデスク、ソファベッドがあります。
ソファベッド側を向いてみます。札幌からの乗車時には既にベッドとしてセットされていました。ソファの下からエキストラベッドを引き出すと幅140cmのダブルベッドとなり、2人で寝ることができます。
ライティングデスク側を向いてみます。デスクの上にはテレビモニタがあり、横には食堂車につながるインターホンが付いています。真中の扉はシャワールーム、左の扉が部屋の入口です。
シャワールームの扉を開けてみます。狭いスペースにシャワー、鏡、洗面台、トイレがコンパクトにまとめられています。旧国鉄時代から、スペースを有効活用するギミックは寝台列車でよく見かけますが、このロイヤルのシャワールームも凝っています。
シャワーの操作パネル。10分間使用できますが、0になってしまってもリセットしてもう10分使用できるようです。
鏡の下にあるユニットは、上段を倒すと洗面台が出てきます。温度調節もできるし、水をためることもできますが、列車が揺れるために少しずつためたお湯は減ってゆきます・・・。
ユニット下段には折り畳み式のトイレが付いています。小さめですが強度は十分、ちゃんと水洗式になっています。
発車後しばらくして車掌さんが検札に来て、部屋のカードキーと、A寝台利用者の特典でアメニティセットが渡されます。
食堂車のクルーがルームサービスでウェルカムドリンクのセットを届けに来ました。お茶、天然水、白ワイン、ウイスキーに氷と、意外とたくさんあります。ワインはミニボトルですがコルクが付いた本格派で、栓抜きも付いてます。
さっそくウイスキーを水割りでいただきます。このときは「ザ・ブレンドオブニッカ」でしたが、後日利用したときは「サントリーローヤル」に変わっていました。客室名に合わせたのかな?
21時前に、森駅に停車しました。広い構内には雪が積もり、星空が広がっています。ロイヤルの窓は北海道内では内浦湾側になり、ここでは北東を向きますが、列車名の由来、北斗七星が偶然見れました!どこにあるかわかりますか?
21:38、北斗星は函館駅8番線に着きました。札幌から4時間20分あまり。振り子特急スーパー北斗よりも1時間以上要するのは、ディーゼル機関車牽引の客車列車だからです。
ここで進行方向が変わり、青函トンネル専用の電気機関車ED79が先頭に立ち、青森に向かいます。華の特急仕業なのに、だいぶ色褪せていて残念ですね。
函館を発車して間もなく22:00を過ぎると、食堂車は予約なしでも利用できるパブタイムになります。北斗星の食堂車は「グランシャリオ」という名前が付いていて、フランス語で北斗七星のことを指すそうです。ディナーは6,000円から8,500円とお高いため、このパブタイムを利用して食事する人も多いですね。
ビーフカレーを注文しました。1,200円くらいだったと思います。ライスの上にレーズンが載っているのが特徴でした。A寝台ロイヤルの乗客はルームサービスを利用することもできます。別の乗車時には食堂車が混雑していたのでルームサービスをお願いし、同じビーフカレーを食べました。
食後に赤ワインも注文しました。電球色の落ち着いた空間で、くつろぎのひと時を過ごして部屋に戻ります。
食堂車の隣には、半室のロビーが付いた車両があります。シャワー室も併設しているので、広さはそこそこ・・・。昔は1両まるごとの「ロビーカー」もあったのですけどね。他のスペースはB寝台1人用個室「ソロ」になっています。
「ソロ」も1度利用したことがありました。ロイヤルに比べると格段に狭く、上下2段の部屋があります。上段は扉を開けると部屋の中に階段があり、登ってゆくとベッドがあります。
上段の客室は天窓に近い、上のほうがカーブした窓が特徴です。窓の下に小さな折り畳みできるテーブルとゴミ箱があり、ベッドはソファ代わりもなるよう、ひじ掛けが付いています。
振り向くと結構急な階段です。写真ではわかりにくいですが、寝ている間に階段に落ちないよう、ガードが付いています。ちょうど通路の上にあたる部分には、荷物置き場があります。
室内灯を消してみました。なかなかいい雰囲気ではないですか?窓の外には津軽海峡線沿線が見えています。狭いですが1人で手軽に利用するには充分かもしれません。このソロの部屋の窓もロイヤルと同じく北海道内では内浦湾を向いています。
ロイヤルに戻って、ベッドの準備をします。といっても、札幌を発車した際にベッドの準備がされているので、カーテンを閉めて枕と毛布を用意するだけです。1人利用の場合は、幅80cmのベッドです。
日付が変わって0:04、青森駅に着きました。よく見ると左端に元青函連絡船八甲田丸が見えます。運転停車のみでドアは開かず、乗降はできません。ここで電気機関車が交換されて再び向きが変わり、上野を目指します。
5:53、目を覚まして外を見ると福島駅に止まっていました。空が白んできていますが、この時期はまだ夜が明けていません。ここでもよく見ると左端に福島交通の電車が見えます。
客室が東側を向いているので、天気が良ければ車窓にご覧のとおり日の出が見れます。日没を楽しむトワイライトエクスプレスとは逆ですね。
カーテンを開けてベッド横にある背もたれを下し、ソファにしてみました。朝日が差し込んで、明るい室内です。
ロイヤルの乗客には食堂車からモーニングコーヒーのサービスがあります。朝焼けの車窓を楽しみながら、目覚めのひと時を暖かいコーヒーとともに過ごします。贅沢な時間ですね。
A寝台個室には、途中の駅で積み込んだ朝刊のサービスもあります。
6:30、郡山に着くころになると食堂車のモーニングタイム営業が始まります。パブタイムの時は気づかなかったですが、ワインレッドの椅子とカーペットにピンク色のテーブルクロスと、インテリアは赤系でまとめられているのですね。
食堂車では1,600円の朝食をいただきました。洋朝食と和朝食が選べますが、僕はいつも洋朝食を頼んでいました。内容はパン・ミニサラダ・厚切りロースハム・ソーセージ・ハッシュドポテト・卵料理・ジュース・フルーツのヨーグルトがけ・デザートと、たくさん!昨夜のビーフカレーより、こちらの方が高価でしたね。
朝食には、食後にコーヒーか紅茶が付いていますので…やはり目覚めの悪い僕はコーヒーで!食堂車の営業は、終点上野に着く30分くらい前に終わり、客室に戻ってそろそろ下車の支度です。
10:05、札幌から17時間近くをかけておよそ1200kmを走り続けた夜行列車は、終着上野駅の郷愁のある13番線にゆっくりと到着しました。青森からは新鋭の電気機関車EF510が先頭に立ち、上野まで「北斗星」を引っ張ってきたのでした。乗客の多くが別れを惜しむかのように、車両にカメラを向けていました。
単純に移動時間だけで比較すると飛行機には遠く及ばない寝台特急ですが、飛行機には無い旅の楽しみがあり、新幹線が無い北海道には、乗り換えなしで都心から都心まで移動できる唯一の移動手段がこの「北斗星」でした。全盛期は3往復でも足りずに臨時寝台特急「エルム」まで誕生するぐらい隆盛を極めましたが、車両の老朽化と、新幹線に追い出される形で廃止となってしまいます。
北海道新幹線が札幌に延伸されるまではまだあと15年先のこと。需要がありながらも車両新造という設備投資を怠っておいて、「老朽化」で廃止とは納得がいかないところもあるのですが。。。残された最後発の夜行列車「カシオペア」が1日でも長く走り続けることを祈ります。
2014.01.05 2013.09.23 2012.11.11 撮影
2015.08.18 UP